第二次世界大戦の地上戦で、かつて戦前まで沖縄に実在していた100年、200年といった超古酒は、ほとんどが失われたといわれています。
現在の沖縄で公表されている中で、もっとも古いと思われるのは、識名酒造にある約150年物といわれている古酒です。
識名研二社長が先代から聞いた話によると、識名家では戦前から酒造りを行っていたそうですが、米軍の攻撃で地形が変わるほど破壊されていたそうです。そんな中、割れずに残っている古酒を探すために、ここだと思われる場所をあちらこちら掘って探していたのですが、なかなか見つかりません。
やはりないのか、とあきらめかけていたとき、ある日夢の中で、ここを探してみろという声が聞こえ、その場所を探してみて見つかったのが、この年代物の古酒甕だったとか。
「この話が事実かどうかはわかりませんよ」と識名社長はいいますが、少なくとも戦渦を逃れた古酒甕として識名家では大事にしており、そのほかにも約120年の古酒、90年の古酒などもあることから、時期を見て仕次ぎをしながら大切に育てたいと語っていました。
残念ながら、沖縄ではこのような世紀を超えた貴重な古酒がほとんど失われました。しかし、戦争で一度途絶えた泡盛の古酒文化を復興させようと、個人で古酒を育て続けている方々も数多くいらっしゃいます。古酒名人で知られる沖縄本島北部の本部町の謝花氏は、戦後まもなく昔ながらのシャム南蛮甕を使って古酒造りを始め、今では50年以上の古酒を所有していることで有名です。
また、1997年に泡盛好きのメンバーが集まって組織された「100年古酒元年」という団体は、毎年3石(一升瓶300本)の泡盛を貯蔵し、100年後に開封して分け合おうという壮大な計画を実行中です。飲めるのはメンバーの子や孫、ひ孫たちになるのでしょうが、そのロマンあふれる計画に魅了された参加者は、この10年間で8千人を超えたといいます。
まだまだ時間はかかりますが、いつの日か、世界中が注目するような古酒の島に、沖縄がなることを願うばかりです。
記事提供:沖縄県酒造組合